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  3. 「自分の役割は、サッカーに例えればボランチ」人と人をつなぐ、街とプロジェクトをつなぐ。

「自分の役割は、サッカーに例えればボランチ」
人と人をつなぐ、
街とプロジェクトをつなぐ。

再開発の進む国際ビジネス拠点、虎ノ門・赤坂エリア。
その中心で、「東京ワールドゲート赤坂」の建設工事が進んでいる。オフィス、国際級ホテルなどのほか、江戸の歴史と文化を紹介する施設も組み込み、世界の人々と東京を結ぶ「ゲート」を目指す。
松村享洋の役割はこの開発に関わる人と人、街とプロジェクトをつないでいくことだ


―兵庫県三田市生まれ。小学校から高校までサッカーに打ち込んだ。
関西の大学に進学し、大学院では建築を専攻。ゼネコンや設計事務所に就職する仲間が多いなか、不動産ディベロッパーを選んだ。

高校まで毎日真っ黒になってサッカーをしていました。テストで赤点をとると補講で練習ができなくなるので、赤点だけはクリアしていたという感じですね。ディベロッパーを選んだのは、決められたことをやるのではなく、自分で決める側になりたかったから。人に指示されるより、指示する方がいいな、という単純な動機です(笑)。もちろん、「街づくりに関わってみたい」という気持ちもありました。


―入社6年目に不動産開発本部アセットマネジメント部に異動。
2019年から「東京ワールドゲート赤坂」のプロジェクトマネジメントを担当している。

都市開発にはたくさんの人や企業が関わります。このプロジェクトは権利関係がちょっと複雑で、隣接する異業種の権利者さんたちとの共同事業。さらに国家戦略特区に認定されているので行政側との協議もあります。プロジェクトをスムーズに進めるためには関係者間の調整が欠かせません。ひとことで言えば、人と人、プロジェクトと街をつなぐのが僕の仕事です。

―立場も企業文化も違う権利者や共同事業者との調整は容易ではない。
しかも松村は30代半ば。相手はほとんどが年上だ。

権利者や共同事業者の方々とは最初に協定を結びます。でも、途中で新たな課題がどんどん出てきます。どれも一度で解決案が出るような簡単なものではありません。「これならwin-win-winだ」と自信を持って提案してもそれぞれの想いもあるし、決めたことが途中で変わることもあります。心が折れそうになることもありますが、相手の立場に立ってもう一度考えるようにしていたら、だんだん距離が縮まっていきました。


―いい関係をつくるのに役立ったのは「フラットな考え方」と「最新情報の共有」、「全体を俯瞰する視点」だった。

共同事業をうまく進めていくためには、双方納得できる落としどころを見つけなければなりません。とにかく、何度もお会いしてとことん話を聞く。森トラストの社員という立場は一旦置いて、相手の立場に立って考える。そして、社内とも調整しながら、フラットな気持ちで最適な方法をもう一度考えてみる。ダメなら2度、3度、考え直す。これが交渉の基本ではないかと思っています。

もう一つ大切だなと思ったことは、相手の判断に役立つようなフラットな情報を惜しみなく提供すること。僕らディベロッパーにとっては「常識」であっても、異業種の企業さんにとっては、初めて聞くようなこともあります。毎日、メールや電話でさまざまな質問をされてくる方もいて、それに一つひとつ誠実に答えることで信頼を得たケースもあります。何かあればすぐ連絡を取り合い、本音で話し合える間柄になると仕事も楽しいし、企業や立場や年齢を超えたつながりが生まれる。そんなとき、ああ、この仕事をしていてよかったなと思いますね。

「全体を俯瞰して観る」大切さも実感しています。こちらの考えを通すために、全体のスケジュールが遅れてしまっては元も子もありません。社外との交渉も社内の調整でも、常に「どうすれば、全体がうまく進むかな」と考えています。サッカーに例えるなら、僕の役割は、試合の流れを見てチームをコントロールするボランチに近いのかなと思っています。

―「やはり直接会って話したい」。一日の大半は誰かと会って話している。

電話やチャット、リモートでの打ち合わせもありますが、僕はやはり直接会って相手の目を見て話をしたい。だから、人と会いまくっています。直接会えば、言葉だけでなく、表情や仕草から相手の本当の気持ちや性格まで読み取れる。フランクに突っ込んだ話をしたほうがいいのか、それとも冷静に論理的に話した方が伝わるのか、いろいろ考えながら対応しています。得意なのは圧倒的に前者なんですが(笑)、冷静に論理的に話すことも大分鍛えられたような気がします。


―松村は「まちづくり推進室」のメンバーでもある。
この組織は、縦割りになりがちな社内各部署に横串を刺して、プロジェクトの全体最適を図るのが仕事だ。

どこの会社でもよくあることかもしれませんが、自分の部署の仕事は完璧でも、隣の部署のことはよく知らない、わからない。でも、一つのプロジェクトを成功させるには、みんなが「自分事」としてこのプロジェクトに積極的に関わってもらわなくちゃならない。僕は「プロジェクト愛」って勝手に言っているんですが、それを広めるために毎日、他部署を回って雑談も含めていろいろな話をするようにしています。

ある部署に行って「あの話、今こうなっているけど、そっちではどうなっているの」という話をする。その話を別な部署に持っていって「こう言っていたけれど、それで大丈夫?」と確かめたり、「そのタイミングだと間に合わなくなるから、急いでもらえる」と頼んだり‥。押したり引いたり叩いたり持ち上げたり(笑)。結局、いろいろな人と話すのが根っから好きなんだと思います。


―「めちゃくちゃポジティブで、誰にでもフレンドリー」と言われている松村だが、悩んだこともある。

生粋の関西人で、年齢とか肩書きとか権威を気にしない性格です。いつも単刀直入、直球勝負。東京で就職してからもそのままの態度でやっていたから、「生意気なヤツだ」と、周りから嫌われていたかもしれません。「キャラを変えようか」と本気で思ったこともありますが、周りが大人だったんでしょうね。だんだん受け入れてくれる人が増えてきて、「キャラ変更」は未遂に終わった(笑)。


―「プロジェクト愛」に燃える松村に、このプロジェクトの見どころを聞いた。

たくさんあって選ぶのに困るのですが、「ここにしかない施設」で、「街のコンセプトにも合致する」という意味で、43階建てのタワーの1~3階にできるミュージアムを挙げたいですね。外国人観光客に日本の歴史や文化を映像や実物で紹介したり、体験してもらえるようにします。

この一帯は大使館やホテルが多く、国際色が強いところ。その一方、江戸城にも近く、江戸の文化を今に伝える名所や史跡が点在しています。この開発地も、江戸時代は黒田藩の江戸屋敷があったところ。近くには赤坂氷川神社もあります。ミュージアムでは、赤坂氷川神社の貴重な江戸型山車2台を常設展示しますし、赤坂氷川祭には、タワーのピロティーに8台の山車が勢揃いする予定です。

赤坂氷川神社の神職さんとも親しくお付き合いさせてもらっているので、よく神社を訪れるのですが、この山車がすごい迫力。山車の一番上には神話や伝説の人物の人形が飾られていて、見上げるような大きさです。このプロジェクトで5台の山車の修復に協力したほか、神社内に設ける山車の展示施設や境内の再整備にも協力しています。

―六本木通りに面した開発地から、赤坂氷川神社のある西側の高台エリアにかけては高低差が大きく、アクセスが悪い。この開発で快適な歩行者道路やバリアフリーエレベーターを整備するほか、周辺道路の電線類を地中化する。

開発地の周囲だけでなく、赤坂氷川神社までの道路を含めて全長約2キロにわたって電線類を地中化します。一つの開発でこれだけ広域な地中化はほとんど例がないと思います。街の景観も綺麗になるし、祭礼のときの山車巡行もスムーズになるでしょう。

江戸時代、赤坂氷川祭は江戸三大祭礼の一つに数えられたほど華やかなものだったそうです。山車の修復や電線の地中化によって、江戸祭礼絵巻の再現に貢献できると思うとワクワクします。これがプロジェクトと街の人々の気持ちをつなぐ絆になってほしいです。


―「東京ワールドゲート赤坂」の全面開業は2025年。そのとき、長男は9歳、長女は4歳になる。

赤坂氷川祭には家族と一緒にぜひ行きたい。タワーのピロティに見事に修復された山車がダーッと8台勢揃いするところはさぞかし圧巻だろうと思います。娘を肩車して見せてやりたいし、息子はきっとはしゃいで走り回ると思います。この開発で敷地内に森もできるので、「虫や鳥を探しに行きたい!」と言い出しそうです。


―歴史と最先端が融合する街で繰り広げられる煌びやかな江戸祭礼絵巻。それは地元の人々の念願でもある。
この頃には、海外からの観光客もたくさん訪れているのではないだろうか。

そんな光景を目の当たりにし、関わった人たちの笑顔に出会ったとき、しみじみと「ああ、いい街づくりに関わったな」という実感が湧いてくるんじゃないかと思います。



「東京ワールドゲート赤坂」のコンセプトは、まさしく「Next Destination~もう一度、街で会おう~」。
第1期2024年夏、第2期2025年秋の竣工に向けて、着々と工事が進んでいる。



Profile
松村享洋(まつむら・ゆきひろ)
2012年森トラスト入社。財務部、発注部を経て、2018年より不動産開発本部アセットマネジメント部。2019年から「東京ワールドゲート赤坂」のプロジェクトに携わる。組織を横断してプロジェクトを統括する「まちづくり推進室」も兼務。趣味はフットサル、特技は子どもたちと遊ぶこと。