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建築図面のチェックから、SDGs対応まで。
ビル管理の最適解を模索し、入居者のパフォーマンスを最大化する。

2024年8月に無事第1期竣工を迎えた東京ワールドゲート赤坂。大型商業ビルの開業を支えるのは企画開発部門・建築部門に留まらない。実際のビルの管理運営には、図面をチェックし、施工に立ち会い、建物管理の仕様を決定するビルマネジメント部門の存在が欠かせない。現場で働く浜田和樹と鈴木祐太に、ビルを育て、見守る、ビルマネジメントの本領を聞いた。

―入居者、利用者、協力会社。誰にとっても最適で快適な場を提供する、環境づくりのプロフェッショナル。

浜田:施設の管理や運営がビルマネジメント部門の主な職務領域です。施設の中には警備会社や清掃業者、設備会社など、複数の協力会社さんが入っているので、その方々と連携しながら建物一棟を丸ごと総合的にマネジメントしています。

最近では、ビル内のエネルギー使用量削減など環境配慮への関心が高いですが、建物自体が20年前に建てられたものだとビルの仕様が環境負荷低減の取り組みに追いつかないケースが多々あります。そんなときは、今ある設備や機能をうまく組み合わせながらいかにニーズに応えていくかを模索し、実現していきます。

鈴木:コロナ禍以降は快適な執務空間の構築を進める企業様も多く、室温・湿度といった居室内の環境に関するお問い合わせもありますし、サステナビリティ関連の数字を開示したいという企業様の場合は、「使用した電気量だけでなく、ビル全体のエネルギー量を知りたい」、「廃棄物の量を教えてほしい」といったお問い合わせも増えています。そのような個別のお問い合わせやご要望にもしっかりと対応していきます。

―ビルが建つ前から始まるビルマネジメントの仕事。図面とにらめっこしては、安全で効率的な管理を可能にすべく、建築部門との交渉を繰り返す。

浜田:赤坂二丁目プロジェクト(現・東京ワールドゲート赤坂)のような大型の新規複合開発の場合は、建物が建つ前から私たちも兼務でプロジェクトチームに配属され、回覧される建築図面とにらめっこしては、円滑な管理運営のための意見を建築部門担当者に共有していきます。

鈴木:例えば日常的な点検のしやすさが担保されているか、過去の漏水事故などの経験も踏まえて同様の事故が起きないような仕様になっているかを検討し、進言していきます。天井に取り付けられた空調機器や照明機器を点検・修繕するための点検口が点検しやすい場所に設置されているかなど、図面を回覧し、会議に参加しながら一つひとつ細かくチェックしています。

図面が確定して建物がフロアごとに出来上がっていくと、出来上がったフロアから順次竣工検査を実施。図面で気づけなかった部分がないか、管理上どうしても変更してもらいたい箇所はないか、建築中の現場を訪れて話し合っていきます。

浜田:図面も検査も本当にたくさんの種類がありますが、基本的にはすべて回覧し、すべて立ち会って、よりよいビルマネジメントのために検討を重ねていきます。建物が竣工間近になると毎日現場に通っていました。

大型複合開発物件ということで把握しなければならない箇所は膨大にありますが、設計者や施工者の意図・思想を理解するため、自分でも簡単な図面を引いて少しでも感覚を近づけられるように努力しました。また、管理面での問題が発生しないように仕様や設計の変更を依頼して、管理ノウハウが設計部門へも共有されるようにも努めました。

―ビル内に存在する数千本の鍵。どの扉にどの鍵を設定するのかでビル内での過ごしやすさや管理のしやすさは変わっていく。そんな、鍵1本1本に宿るビルマネジメントの本領。

鈴木:キープランを考える仕事というものがあるんですよ。大型ビルに存在する無数の扉には一つひとつさまざまな種類の鍵が取り付けられており、その数は数千にも及びます。カードキーやアナログの鍵などを併用していますが、無数のテナント関係者や協力会社の出入りがある中で、セキュリティと管理運用面の双方から、どの扉とどの扉を同じ鍵で入れるようにするのか、専用部(入居者単独で使うエリア)と共用部(廊下やエントランスなど多数の関係者が使うエリア)における人々の導線を考えながら、慎重に検討していきます。

浜田:竣工が迫ってくると、新しく入居が決まったテナントさんにビルの仕様やご利用方法についてご説明をしたり、入居する中でのさまざまなご相談に乗ったりします。また、ビルの運営が始まれば空調設備や衛生設備といった複数の設備機器の修繕計画も立てていきます。

―専門知識がなくても現場で成長し、活躍できる。

鈴木:私は高等専門学校在学中、電気・情報・制御などを学ぶ学部に所属し、卒業論文では、AMD(アクティブ・マス・ダンパー)について執筆しました。大きな建造物になると人が歩く振動や風の影響などで建物全体が揺れてしまうことがありますが、AMDはこのような居住者にとって不快な揺れを軽減するために屋上に取り付ける大きな重りのような存在です。実際に管理しているビルでAMDを見かけたときは、とてもうれしくなりましたね。

浜田:へぇ、そうなんだ! 学んだことが生きてるね。自分は高専での専門は電気でした。仕事に直結するわけではありませんが、建物に必要な電気の知識というのは自然と受け入れることができたと思います。

鈴木:浜田さんは技術的な知識量が半端じゃないんですよ! 自分が知らないことをたくさん教えてくださいます。仕事への目線や考え方も自分とは違ってとても勉強になります。

浜田:いやいや、彼こそ優秀な後輩なんです。優秀ですし仕事が総じて丁寧だから、すごくいい仕事ができるんですよ。実際、予備知識として高等専門学校で学んだ知識も生きますし、実務的なことは仕事をやりながら学んでいったという感じですね。

―生まれてくる子どもが双子だとわかり、半年間の育児休暇を取得。竣工直前の時期と重なったが、快く送り出してもらえた。

鈴木:2024年に子どもが誕生しました。生まれてくる子どもが双子の予定だったので、妻とも相談して、長めの育休をとることにしたんです。

2024年の年明けには人事と同じグループのメンバーに、6月から12月までの半年間、育休を取得させていただきたいと伝えました。その時期はちょうど東京ワールドゲート赤坂1期竣工のタイミングで、1番大変な時期に現場をお任せしてしまうこととなり本当に申し訳なかったのですが、ありがたいことに是非休んでくださいと皆さんに言ってもらうことができました。

浜田:それはもう是非休みを取ってほしいと伝えましたね。会社の制度としては充実しているのですが、特に我々技術職のメンバーについてはまだまだ若手社員が多いということもあってあまり前例がありませんでした。せっかくなのでこの機会に制度をフル活用してもらえたらと思いました。

鈴木:社内的に短い育休を取得されている男性社員はいましたが、長期にわたって取得したケースというのはまだ少なかったのでいろいろと不安もありました。ですが、実際取得してみると、パソコンも社用携帯も回収されるので自ずと仕事ができない環境になり、メリハリをつけて育児に専念することができました。子どもとこんなに一緒にいられる時間というのも今後そうそうあることではありません。本当に1日1日を大切に過ごすことができたので感謝の気持ちでいっぱいです。

―昨日まで誰もいなかった場所で、数十人が一斉に動き出す。何もないところから管理プランを考え、運用する。プロジェクトの最初の山場を越えて、いま思うこと。

浜田:これまでの業務では作られたルールの中で管理運営していくというのが主な仕事でしたが、このプロジェクトに参加するに当たっては、具体的なイメージが湧いていない状態でビル管理の仕様を作っていかなければいけないことが、自分としては最大の山場だったように思います。その建物での前例がない中で、管理の運用や仕様を決定していく。「じゃあ今日から管理を始めます」といって数十人が一気に動き出すと思うと、想像もつかない挑戦に感じました。

鈴木:社内的にも本当に多くの部署の方が携わって長い時間をかけて作り上げていくんだと実感することができたプロジェクトでした。プロジェクト期間中はできるだけ積極的にコミュニケーションを取ることを心がけましたね。そして、完成後はできるだけ長い間、入居者の方々が最大限のパフォーマンスが発揮できるビルとなるように、私たちが責任と使命感を持って維持管理していきたいと思っています。

―まずは第2期竣工で管理を軌道に乗せる。そして何十年と愛される施設を築き、将来的にはビルの取り壊し、すなわちビルの一生についても学んでいきたい。

浜田:はじめての大型のプロジェクトに携わって、正直自分自身の反省点が多かったと感じています。これからこのビルを何十年と管理・運営していくに当たって、今回抱いた多くの葛藤は忘れずにいたいと思いますね。

また、今回ビルの誕生に立ち会えたので、今度は逆にビルの取り壊しについても経験し、ビルのライフサイクルを学んでいきたいと思っています。

鈴木:まずは今秋迎える第2期竣工が次の大きな山場。一気にテナントさんの数も増えていくので、気を引き締めて全力で取り組んでいきたいと思います。

Profile1

浜田和樹(はまだ・かずき)写真右
神奈川県生まれ。高等専門学校を経て、2015年に森トラスト・ビルマネジメント株式会社に入社。御殿山・大崎、丸の内などのビル管理を経て、2024年より東京ワールドゲート赤坂グループに配属。現在に至る。

Profile2

鈴木祐太(すずき・ゆうた)写真左
千葉県生まれ。高等専門学校卒業後、2017年に森トラスト・ビルマネジメント株式会社に入社。三田、汐留などのビル管理を経て、2024年より東京ワールドゲート赤坂グループに配属。その後半年間の育休を取得し、2025年1月より職場復帰。現在に至る。

写真右:浜田和樹(はまだ・かずき) 写真左:鈴木祐太(すずき・ゆうた)