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商品開発は「ときめき」を大切に
ものづくりの道は楽しい旅路に似ている

宿泊客を「おかえりなさい!」と出迎えることで知られ、多くのリピーターに愛される軽井沢の老舗・万平(まんぺい)ホテル。ショップに並ぶ商品の数々は時代を超えて愛され、贈答用としても親しまれてきた。ホテルの開業から130周年の節目で実施した大規模なホテルリニューアルに際して、ショップの商品ラインアップを刷新。次の100年も愛されるホテルであり続けるために、ショップの商品開発に挑戦する、森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(株)セールス&マーケティング部の崔(さい)さんに、仕事の魅力とやりがいについて話を聞いた。

―130年の歴史を受け継ぐ万平ホテルで、ショップ商品の新たな価値づくりに挑む

崔さん:現在セールス&マーケティング部で新規事業のブランディングやマーケティングを担当しています。主に万平ホテルの担当として、ホテルリニューアル以降に注力してきたショップ商品の企画開発を手がけています。次の100年もお客様に愛されるホテルであるためには、建物の改修・改築だけでなく、ショップで販売するギフトも、お客様が万平ホテルで過ごした素敵な時間を思い出せるようなものへと進化させる必要があると考えています。

「万平ホテル」外観

2024年リニューアル後のショップ

万平ホテルは長年ファンでいてくださるお客様が多いため、さまざまな関係者と意見を交わしながら新商品を考案しています。

―仕事の原点は日本のアニメとアイドル! 日本のカルチャーに魅了され、日本語とともに歩んだ学生時代

崔さん:私は中国の湖北省出身です。幼い頃から日本のサブカルチャーにハマり、特に小学生のときに大流行していたアニメ「しゅごキャラ!」が大好きでした。日本のアイドルではAKB48のたかみな(高橋みなみ)さんの大ファンとなり、彼女のスピーチを丸暗記。中学校から外国語学校に通って日本語を第一外国語として学びました。

大学時代には日本語を生かして日中の同時通訳の仕事を経験しました。大学を卒業した2020年頃は翻訳技術が急速に進化していく時期でもあり、言語を扱うだけでなく、日本語を活かして、日本で“形に残る価値”をつくる仕事がしたいと考えるようになりました。

―日本の「おもてなし」に感動。ゲスト一人ひとりに寄り添う、日本のホテルでの体験が進路を変えた。

崔さん:大学時代に日本語のスピーチコンテストやディベートコンテストに出場したことがあり、そのご褒美旅行や日中の交流イベントなどで日本のホテルに宿泊したことがありました。その際のゲスト1人1人に寄り添ったサービスに感動!他の国と全く違うサービスの質を感じ、日本のホテルで初めて「おもてなし」というものを感じることができました。

その経験をもとに、観光業界での就職を考え、全国に多様なブランドでホテルを展開し、さまざまな場所の観光資源を引き出せそうだと感じた森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(株)に入社を決めました。就活中に私の名前を正しい漢字で書いてくれたのもこの会社だけで、人を大切にしてくれる会社なんだと感じたことも入社の動機となりました。

―ぶっつけ本番の現場配属で学んだ、ホテルのリアル

崔さん:森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(株)では、入社1年目はホテルの現場に配属され、ホテルの全体像を勉強することになります。まずは東京マリオットホテルのベル担当となり、お客様の荷物をお運びしたりご案内したりしながら、ホテルスタッフの1日、ホテル全体のオペレーションを学びました。その後2023年7月、開業が翌月に迫った「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」へと異動となり、いきなりフロントのチェックイン担当となりました。

最初の1~2カ月は、ラグジュアリーホテルの上質なサービスを求めるお客様に対し「基本中の基本しか知らない自分で大丈夫なのか」という不安がつのり、忙しかったという記憶しかありません。実際、私の対応が嫌だとお叱りを受けたこともあります。それでも基本に忠実に、自分らしいホテルスタッフとしてのスタイルを模索していきました。

―自ら動いて生まれた「アートツアー」 建物の魅力を伝えたい想いから始まった、小さな挑戦

自分らしいホテルスタッフの在り方を追求した結果生まれたのが「アートツアー」です。紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良は、100年以上の歴史ある建物をそのままに、歴史的な風情と現代的で最上級のサービスを提供しているホテル。私はそんな建物の歴史を活かした内装やその場に適したアートが飾られている点がとても素敵だと考えていたので、ホテルそのものに興味を持ってくださるお客様に対して独自にアートツアーを始めました。

旧奈良県知事公舎を改修・改築したホテル「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」

すると口コミで評判が広がり、徐々にリクエストしてくださるお客様が増えたため、のちに正式なホテルアクティビティとして定着しました。

―歴史とトレンドをつなぐ、万平ホテルの商品開発 フラワークッキー缶に込めた、万平ホテルブランドへの想い

崔さん:ホテルでの現場勤務を終えて、携わるようになったホテルの商品開発の仕事で思い出深いのは、万平ホテルのレストランのメニュー表「大正クラシックメニュー」の花柄デザインをモチーフとした「万平ホテルフラワークッキー缶」の開発です。

万平ホテル フラワークッキー缶・春

メニュー表「大正クラシックメニュー」

この商品は2025年の8月から販売を開始しており、現在第3弾まで発売されているシーズナル商品です。ホテルリニューアルを記念して「万平ホテル プレミアムクッキー缶」という商品を通年で販売していましたが、シーズナルでお客様に楽しんでいただける万平ホテルを象徴するようなギフトをつくりたいと考え起案したものです。万平ホテルファンのお客様だけでなく、新規のお客様にも刺さるようなデザインにすべく、万平ホテルに縁あるモチーフを可愛く表現することを意識しました。

―コンセプトからデザインまで、すべて自分で企画したオリジナルハーブティー

2026年2月にはクッキーと合わせて紅茶も楽しめるようにと「万平ホテルオリジナルハーブティー・朝焼け」を発売しました。ハーブティーはコンセプトからすべて自分で発案。私自身が宿泊した際の、客室の窓から見えた朝焼けの美しさをイメージして、ハイビスカスやローズヒップ、ジンジャーやレモングラスをブレンドした朝の目覚めにピッタリな飲み口のハーブティーを開発しました。

どんな色、どんなブレンドで万平ホテルからみえた朝焼けを表現するか、メーカーさんと試飲・試作を繰り返して形にしていきました。メーカーさんが細々とした調整に根気よく対応くださり、理想通りの商品を実現することができました。

「万平ホテル オリジナルハーブティー・朝焼け」イメージ

―商品の華やかさとかわいさは妥協できない。そのためには、七転び八起きの精神で試作し尽くす

崔さん:ハーブティーの缶はこだわりのデザイン。当初はシンプルな円柱形でしたが、社内で相談した結果、フタの部分に少しカーブのある壺のようなデザインの缶を採用することになりました。ところが、フタの部分にカーブがあると柄合わせが難しく、フタの部分にはシンプルに色を乗せるだけのほうがいいと缶メーカーの方から言われましたが、華やかにしたいという思いからフタ部分にも花柄を入れることに。柄合わせには本当に苦労しましたが、結果的には缶メーカーさんも「まさかここまで可愛くできると思わなかった」というお声をいただきました。また、お客様からも「昔よりおしゃれになった」「缶をずっと取っておきたい」と言っていただけたことがとても嬉しかったです。

―ときめきを大事に。自分がときめかないものは、誰の心にも届かない。

崔さん:自分が商品のデザインを考えるときは、自分自身のときめきを大切にしています。自分がときめかないものは、きっと誰かの心に届くこともないだろうと思っているからです。一方で、ショップの商品開発は上司や現場の総支配人など、関係者の皆さんと協力しながら進めるもの。万平ホテルに勤めて40年の大先輩にも納得していただけるような商品にしなければなりません。そこで毎月軽井沢に通って月1回の定例会でヒアリングするなど、現場の声を大事にするようにしています。

”ときめき”を大切に企画開発した「万平ホテル×FEILER コラボハンカチ」や「カシス&ブルーベリーサンド」

―正解のない世界を楽しむ 商品開発という終わりのない旅

崔さん:情報収集にはかなり力を入れており、競合で売り出している商品、トレンドを常にチェックして自分の感度を上げることにも注力しています。トレンド発信メディアや「お取り寄せ」情報を発信しているメディアを毎日チェックし、出かけるときには百貨店のお菓子コーナーにも必ず立ち寄ります。

趣味のパン屋巡りの際には今どんな焼き菓子が置かれているのか、どんなパッケージが売れ筋なのかを常に意識して見るようにしていますし、商品に使う素材を自ら仕入れに行くこともあります。世の中にどんなトレンドがあるのか、万平ホテルではどのように生かすことができるのか、視野の持ち方が変わったと感じます。

私がキャリアの最初に日本語通訳ではなく観光業界への就職を決めたのは、自分の手で何か形あるものを作り出したかったから。いままさにそれが叶っていると感じます。何が正解で、どんなものを作るのか、商品開発は自分の手で何かを作りだす旅のようなもの。その旅路そのものが本当に楽しいです。

―万平ホテルの新たなレガシーを、次の時代へ

崔さん:今は万平ホテルというブランドを育てている段階ですが、今後は軽井沢のショップだけではなく、他の都市や東京の百貨店にも万平ホテルブランドギフトを販売できたらと構想しています。

歴史に残るような、と言ったら少し大それた発言になってしまうかもしれませんが、それほど知名度のある商品、万平ホテルを代表する新たな商品、これからのレガシーとして伝えていけるような商品を作っていきたいと思います。

Profile

崔さん
中国・湖北省出身。2023年に森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(株)に入社。東京マリオットホテルのオペレーションを担当した後、紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル奈良のオープニングスタッフとして勤務。2025年より本社に異動。現在は、セールス&マーケティング部にて、万平ホテルのマーケティングを担当。趣味はランニングやサイクリング、ダンス・音楽制作、推し活、読書など幅広く、パンとコーヒーに目がない。

崔さん