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本社移転チームが目指したのは、
社員の「目的地」となり、
変化に自在に対応できるオフィスだった。

森トラストは2023年5月、「東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー」に本社を移転した。
移転2か月後の社員アンケートでは、「他部署とのコミュニケーションが増加した」85%、「自社への愛着が増した」63%、さらに半数以上が「同僚や会社とのつながり意識や出社意欲が向上した」と評価。
本社移転プロジェクトを任されたのは、総務の山内貴矢をはじめ、さまざまな部署から集まった入社数年目の中堅・若手社員。彼らは何を考え、何に悩み、どう動いたのか?


―山内が総務人事部に異動したのは2019年8月。まだ、コロナが広がる前だった。当時、本社移転が検討されており、山内はその担当として、基礎データを集め、オフィスの一部で実証実験を進めていた。しかし、コロナ禍で状況は一変する。

コロナで、オフィスや働き方に対する考え方は激変しました。否応なく働く場や働き方の選択肢が広がる中で、「本社移転をする意味は何か」、「オフィスはなぜ必要なのか」を問い直し、ゼロから仕切り直したという感じです。

伊達社長から「その答えこそ、これからのオフィスのコンセプトになるはず。合宿して考え抜きなさい」と指示があり、2020年10月、各部署から集まった7名が軽井沢に向かいました。大半が営業・新規事業などで活躍している中堅社員で、総務人事部からは入社数年目で20代後半の私だけ。よくこんな若手に本社移転プロジェクトを任せてくれたものです。正直言って、「本当にいいんですか?」という気持ちでした(笑)

―軽井沢には森トラストのマリオットホテルがある。7名はそこをベースに深夜まで議論を重ねた。翌朝、社長に結果を報告し、助言を得てさらにコンセプトを練り直す日々。4日間の合宿後半には社長も合流した。

最後には疲労感で脳みそがグッタリ(笑)。その後1週間の記憶が飛んでいるくらいキツかったけれど、実に貴重な体験でした。

―軽井沢合宿で、これからのオフィスのコンセプト「DESTINATION OFFICE」が決まり、新オフィスをつくる指針となる3つのキーワード、「ENERGY」「SYNERGY」「COZY」が生まれた。

新本社を社員が集まりたくなる目的地(DESTINATION)にしよう、そのために集まる価値と魅力を最大化できるようなオフィスを目指そう、という思いがこもっています。元々新本社のために考えたこのコンセプトは今、当社のオフィス事業のビジョンになっています。

もちろん、企業によってその形は違います。では、「森トラストにとってのDESTINATION OFFICEとは何か」を考えたとき、当社の特徴である社員の仲の良さとフラットな関係を増進させること、そして、それぞれが新しいことにチャレンジし、他部署と連携してスピーディーに実行できるようなオフィスではないかと考えました。

また、時代により働き方も人も価値観も変わります。ですから、「Agile(状況の変化に対して素早く対応すること)」も、新オフィスの重要なポイントとして挙がりました。

―コンセプトを具体的な形に落とし込むには、オフィスづくりの指針となるキーワードがいる。議論が煮詰まったとき、突破口となったのは、なんとカーリングだった。

軽井沢で、チームづくりと気分転換を兼ねて皆でカーリングを体験しました。最後に簡単な試合をしたのですが、初心者ですから、40メートル先の円を狙っても、ストーンの行く先はわからない(笑)。それでもチームで戦略を立て、ストーンを投じる人とブラシで氷をこする人が懸命に声を掛け合いながら、夢中になってプレーしているうちに、メンバーの距離が一気に縮まりました。

そこで気づいたんです。「これって働き方と似ているよね」と。オフィスもまた目的を共有し、想いや意見を熱くぶつけ合う場でありたいということで、「ENERGY」というキーワードが出ました。さらに社長の助言もあり、「ENERGY」だけでなく、互いに理解を深め合う「SYNERGY」や、心身ともにリラックスできる「COZY」という要素も必要だということで、3つのキーワードが揃ったのです。

―この考えは新本社の随所に組み込まれている。旧オフィスの5つのフロアをワンフロアに集約。フリーアドレスとABW(※)を基本としつつ、部署の拠り所となる「BASE」を設けて部署間のコミュニケーション促進と部署内の一体感を両立させた。「ENERGY」を最大限に引き出す仕掛けだ。洗練されたロビーや執務空間内のラウンジは「SYNERGY」や「COZY」を象徴している。また、間仕切りや家具を可動式にして大空間の可変性を高め、変化に自在に対応できるようにした。

※ABW(Activity Based Working)とは、その時々の仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方

新本社に移転してから、たくさんの方に「他の部署の人と話す機会がすごく増えたよ」と声をかけられ、ホッとしています。

一方で嬉しい誤算もありました。予想以上に出社率が高まり、「席がない」という声や、「こういう予約方法・運用にしてくれたら使い勝手がいいのに」という意見が…。有難い意見だと思って、今、運用ルールをアップデートしています。

しかし、移転前は、不安や不満の声がめちゃくちゃ多かったんですよ。新オフィスでは働き方が劇的に変わりますから、当然だと思います。旧本社は、部署別のフリーアドレスまたは固定席で、人事のような秘匿性の高い部署は個室。それが今回、一気に大海原に解き放たれるわけですから(笑)

でも、やってみるしかない。400人いれば400の意見が出ます。誰もが納得する答えなんてないし、平均値を求めれば新しいものはできない。僕らは、紙と固定席の時代と、ペーパーレス&フリーアドレスの時代の狭間の世代です。「そういう世代だからこそ、できることがあるはずだ、それを貫こう」と腹を括ったので乗り切れたのかなと思います。

―大変な時は大好きな野球観戦で発散した。大学時代は学生新聞の記者として、六大学リーグをはじめ、年間50試合くらい観戦していたという。冷静沈着だが、内に熱い炎を持つ男だ。

オフィス移転の直前 、業務量はピークに達しました。ちょうど、その時期にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)があり、どんなに助けられたかわかりません。特に準決勝の対メキシコ戦。9回裏、大谷が2塁ベースで両手を振り上げてチームを鼓舞し、村上のサヨナラタイムリーで逆転勝利。その瞬間、全ての苦労やストレスが吹っ飛びました(笑)。

―オフィス移転やオフィス改変を考えている企業は多い。「そうした企業の担当者にアドバイスするとしたら?」と聞いてみた。

1つ目は、ボトムアップで進めること。どんな働き方をしたいか、そのためにどんなオフィスにしたいか、社員の熱い思いと冷静な検証結果を揃えて経営陣に提案し、密なコミュニケーションを取り続けることではないかと思います。

2つ目は、「不安や不満が出るのは当然」と腹を括って、とにかくやってみることです。ダメな部分は変えればいい。トライせずに諦めるのが一番良くないと思います。 もう一つ付け加えるとしたら、いろいろな方法で、オフィス移転やオフィス改変に対する社内の気運を盛り上げることです。

―山内たちも、本社移転に向け、ユニークなイベントや頻繁な情報発信で社員の関心や期待を盛り上げている。

オフィス移転は社員一人一人に関わること。やはり移転前から関心を持ってもらいたいし、新オフィスを楽しみにしてもらいたい。そこで本社移転をエンタメ化し、楽しみながらイベントに参加してもらったり、情報発信の仕方を工夫して期待や共感を高める努力をしました。

節目節目の社内プレゼンはもちろん、工事現場の定点写真を隔週で公開したり、ユニークなポスターで本社移転をアピールするなど、頻繁に情報を発信し続けたのです。

また、社員の投票で執務室の椅子を決める「椅子の総選挙」や、「3ジー診断」も社内を盛り上げました。これは、新オフィスのキーワード「ENERGY」「SYNERGY」「COZY」(3ジー) に関心を持ってもらうために有志で作ったもの。質問に答えると、自分がどのタイプか判定できます。当社の社員しかわからないレアな質問があったり、「この判定、かなり当たっているよね」と話題になりました。

移転前に掲示していた、社内の本社移転に対する関心を高めるためのポスター。山内自身もモデルとして登場した。

―オフィス移転は完了したが、「これはゴールではなく、新たなスタートです」と山内。新オフィスのポテンシャルを引き出す仕掛けや仕組みづくりが、これからのミッションだ。

例えば、執務スペースのラウンジをもっと幅広く活用してもらいたい。リラックスした会話や雑談から、思いもよらぬアイディアがポロッと出てくるような気がしています。

業務時間外の交流の場としてもどんどん使ってほしい。先日、ラウンジを可動間仕切りで閉じてサッカー観戦をしました。社長もお寿司を差し入れしてくださり、軽く呑みながら大いに盛り上がりました。こうしたイベントを通じて、社員同士が仕事以外の面を知ることで、より深く理解し合えるのではないでしょうか。

家族を連れてきて職場や働きぶりを見てもらう「ファミリーデイ」も開催されました。「授業参観」ならぬ、「仕事参観」です。これからも、いろいろ面白い仕掛けを展開していきたいと思っています。

この新オフィスには無限の可能性がある。社員の声を聞き、当社が開発した座席管理ツール「WORK AGILE」のデータも活用して、どんどんアップデートし、森トラストらしく進化させていきたいです。

オフィスを提供する事業者としても、この空間や経験をベースに、お客様に合った新たなワークプレイスのあり方を提案したり、お手伝いできるのではないかと思います。そういう意味では、これからが本当のスタートです。


Profile
山内貴矢(やまのうち・たかや)
愛知県名古屋市出身。2016年森トラスト入社。営業業務管理を経て、2019年8月から総務人事部総務グループに異動し、本社ファシリティマネジメント業務、本社移転業務に携わる。好きなことは野球観戦、お笑い、ボーリング。大学時代は、学生新聞の記者として年間50試合を観戦した。